独書は毒っしょ

読書の記録

独書日記33〜『水と礫』藤原無雨〜

こんばんは、うどくです。

私ごとではありますが、電子書籍デビューを果たしました👏

本は紙でこそ棚に並べてこそなんぼと思っていましたが、新しいものに手を出さないのは良くないなと思ったというのがあります。

実際、横になって読むときは電子書籍は楽だなーと感じています。あとは、洋書で難しい単語に注がつく機能があるらしいので挑戦してみたいとも思っています。

 

 

今回読んだ本は藤原無有『水と礫』です。

先月大きな本屋さんに行ってジャケ買いをした一冊です。

あらすじを見た限りでは好みのものではなかったのですが、スマホをいじっていると自分の好きなものしか画面に出てこないので意図的に外すのも大事かと思っています。

ネットで本を買うのも楽ですが、新しい出会いのある本屋にも月1では足を運びたいものです。

 

 

 

以下、感想パートです。

 

 

 

あらすじ

東京に出稼ぎに出ていたクザーノは職場で事故を起こしてしまい故郷へ戻ることになる。何にも手につかなかったクザーノだが、弟分の甲一を追い砂漠を越える旅を出る。

 

あらすじだけ見るとなんてことない気もしますが、この作品は 所謂ループものとなっています。

繰り返されていく中でクザーノの親の代、子どもの代へと描かれる幅が広がっていきます。それによって、前は丁寧に描かれていたことも簡略化されたり、省略されたり、違っていたりしていました。

東京、クザーノ、出稼ぎ、砂漠というワードから主な舞台は海外かと思われたかもしれませんが、そうとも言えません。本文では、クザーノの故郷から東京へはバスと電車、新幹線で行けると書かれています。

また甲一という人物も不思議なことに、繰り返されるパート毎に少しずつ違った境遇に置かれた人として描かれていました。

こういうことが相まって、ファンタジーというか幻想的な雰囲気の物語になっています。

 

テーマとして人生というのが、据えられているのかなと思いました。

クザーノ)

「お願いだ、お前から人生なんて言葉は聞きたくない。こんなに悲しい言葉はないんだ。・・・」

「お爺ちゃんはな、今まで生きてきたすべての風景を、これから生きるすべての風景を人生なんて言葉でまとめちゃいけないと思っている。世界はそんなに簡単にできちゃいない」

「お爺ちゃんの風景にはな、お婆ちゃんの風景も入っているし、父さんが見た風景も入ってるし、お前の見た風景も入っている。お爺ちゃんにも父さんや母さん、妹もいた。どの父さんにも父さんがいてお爺ちゃんがいたんだ。その皆が見た風景が、お爺ちゃんの見てきた風景が詰まっている。お前にも同じようにお爺ちゃんの見てきた風景が詰まっている。人生なんて言葉はそれを全部忘れることだ」

「お爺ちゃんの中は、お爺ちゃんの知ってる大切なこと、知らない大切なことでいっぱいなんだ。紅茶を飲んだり、葉巻を喫ったりしているときに思い出すんだよ。見たこともないことを思い出す。誰かの見た風景だ。人生なんていうのは、人間がひとりじめする風景のことだ。でも、そんなものは無いし、あっちゃいけない」

これはクザーノが孫に向けて言ったセリフです。

このセリフはとても暖かくて、感動しました。

自分の生には、自分だけがいるのではない。綿々と繋がってきた人たちも自分の人生にいるというのはなんと心強く優しい考えでありましょう。

個が強調されるている中でこのような考え方をは私にとって心の支えになりました。

自分にも他人にも優しくなれる言葉だと思います。

繰り返しの中で、描写の簡略化、省略、差異があるのも、過去を懐古したときに生じるものになぞられているように思われました。

 

話が進んでいくにつれてどんどん話が膨張していくのですが、最後は調和した感じで終わるのは不思議な感じでした。

繰り返しの描写に多少飽きを感じましたが、楽しめました。

幻想的で他の小説とは違った感じを味わいたいときにおすすめの1冊です。

 

 

 

 

 

今回はこんな感じです。

こういうループものだと『百年の孤独』なんかが有名ですね。世界文学の大作などと評されているのをよく目にするのでどこかで挑戦したいものです。

冬休みは短いですが、何か古典の大作に挑んでみよかな、、

ちなみに更新が前回から一ヶ月空いてしまいましたが、本はそこそこ読んでおります。ただ文章を書く心持ち出なかったのでこのように滞っておりました。

これから随時更新していきたいと思います。

尚「最近読んだ本」とすると記事を振り返ったときに見た目が貧相になってしまうと思ったのでしばらくは1冊ずつ感想を上げていこうと思います。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます😊

次回もぜひ楽しみにしていてください。