独書日記39〜『推し、燃ゆ』宇佐見りん〜
おはようございます、うどくです。
最近は寒い日が続いたためか、水道管が凍結してしまうというアクシデントが発生しました。
水が出ない生活はトイレに洗濯、風呂、料理とできないことが多すぎて大変でした。
緊急事態宣言だと世間では言われているのに、トイレのためにコンビニへ行くことが私にとっては不要不急になってしまうという状況は滑稽に思えましたね。
一人暮らしの通過儀礼のようなものをまた一つ乗り越えることができた気がしています。
皆さんも冷え込んだ時は気をつけてください。
今回読んだ本は宇佐見りん『推し、燃ゆ』です。
以前本屋さんに行った時に書影とタイトルに惹かれて購入し、積んでいた1冊です。
今回、芥川賞にノミネートされたということで発表の前に読んでおこうと思いこのタイミングで読みました。
(追記:『推し、燃ゆ』芥川賞受賞しましたね
今回の芥川賞には他にもクリープハイプの尾崎世界観さんの著書もノミネートされるなど気になる作品も多かったのですが、他の作品は文芸誌でしか読むことができないので断念しました。
ノミネートをきっかけに単行本化されると思うのでいつか読みたいなあと思っております。
以下内容の紹介と感想になっています。
あらすじ
「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」
主人公あかりの「推し」であるアイドルがファンに暴力をふるい炎上してしまう。あかりはライブに行ったりグッズを収集することはもちろん、「推し」の発言を逐一メモし「推し」を解釈しようとしていた。しかしこの事件をきっかけに「推し」を取り巻く環境、そしてあかり自身にも変化が、
推し、炎上といった極めて新しい文化現象をテーマとして扱った作品になっています。
主人公のあかりは発達障害を持つ高校生で、所謂「推し活」に全てを捧げています。
「推し」を推すことが生活の「背骨」であり、「推しのいない人生は余生だった」とまで言います。
そんな「推し」が炎上し最終的に引退に至る経緯の中で、あかりはいろいろ不安定になってしまいバイトも学校も辞めることになってしまいます。
全てを失ったと言っていいような状況でも、彼女は「推し」に縋り続けるのです。
この作品を読んで「推し」という存在は諸刃の剣のようなものであると思いました。
あかりは「推し」という存在のために辛いバイトにも耐えるなど、「推し」は確実に彼女の精神的な支柱になっていました。
またあかりは「推し」の解釈に全力を捧げていました。
これもあかり自身が発達障害のために周りから理解されなかった分、「推し」を理解するという方に気持ちが動き、彼女の精神を安定させていた要因であったと思われます。
しかし、彼女の尽力も「推し」のふるった暴力といったものを捉え切ることはできなかったのです。
結局、あかりにとっての「推し」は一つの偶像に過ぎません。
本人は実在したとしても、彼女にとっての「推し」はあかりの中にしかいません。
それは、あかりがお金と時間をかけて構築してきたものでしたが、不意の言動により壊れてしまう脆い像なのです。
あかりは最後の方に、「推し」が住んでいると特定されているマンションへと赴きますが、そこでの描写はとて切ないものでした。
突然、右上の部屋のカーテンが寄せられ、ぎゅぎゅ、と音を立てながらベランダの窓が開いた。ショートボブの女の人が洗濯を抱えてよろめきながら出てきて、手すりにそれを押し付けるようにし、ため息をつく。
・・・
あたしを明確に傷つけたのは、彼女が抱えてた洗濯物であった。あたしの部屋bにある大量のファイルや写真や、CDや、必死になって集めてきた大量のものよりも、たった一枚のシャツが、一足の靴下が1人の人間の現在を感じさせる。
・・・
もう追えない。アイドルでなくなった彼をいつまでも見て、解釈できることはできない。推しは人になった。
「推し」への思いは、つまるところ自分の中で自己完結していたのでしょう。
この後に、あかりはやり場のない気持ちを綿棒のケースを持った手を床に叩きつけるように 振り下ろします。
これこそ彼女がこれまでしてこなかった感情の発露なのです。
この行為は、ぼんやりとですがあかりにこれからの自身の生活に目を向けさせます。
親離れとは違いますが、これも新しい一つの独り立ちの通過儀礼のように感じました。
自分の精神的支柱が崩れ去りそれを乗り越えていくあかりの姿は、痛々しく辛くなりますが、 誰にでもある体験ではないでしょうか。
「推し」がいる人もいない人も、自分に引き付けて読むことのできる作品だと思いました。
今回の感想はこんな感じです。
いつも以上まとまりがない文章になってしまいました、、
読了したのは1週間以上前なのですが、読んで考えたことがなかなか言語化できなくて今回は苦戦しました。
(前語りを書いてる時点では寒波で冷えていたのが懐かしいです
そんなこんなで直木賞・芥川賞の発表の日になってしまいましたが、なんとか形になってよかったです。
この作品しか読めていませんが、どの作品が受賞するのか楽しみですね。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます😊
次回も楽しみにしてもらえると嬉しいです。