独書は毒っしょ

読書の記録

独書日記36〜『「小児性愛」という病』斉藤章佳〜

こんばんは、うどくです。

こちらは雪は降っていないとはいえ、寒い日が続いております。

そうなると布団から出るのが億劫でつい二度寝してしまったり、布団に入ったまま作業をして寝落ちしてしまったりと寝過ぎてしまう毎日を過ごしています。

私は実家にいた時朝はさっぱり起きれなかったんですが、一人暮らしをして結構経ってくると起きなければならない最低ライン直前には起きれるようになるもんですね。

結局のところは気持ちなんだったのかと思う最近です。

 

 

 

 

今回読んだ本は

斉藤章佳『「小児性愛」という病-それは愛ではない』

です。

これも授業で関連で興味を持って読んだ本になります。

SM嗜好を病理として扱う言説の歴史の上での変化を扱った授業の回がありまして、そこでSM嗜好を持つ人が自身をLGBTと同列に扱うようにと主張をしていることを知りました。

私としてはSMには加害性があって同列には語れないのではと思いつつ、かと言って個人の嗜好を病理とみなして否定してしまうのもどうなのかと思っていました。

SM嗜好関連で読みやすそうな本がなかったので、この本を読んでみようと思った訳です。

 

 

 

 

以下、内容の紹介と感想になっています。

 

 

 

まず本書において語られているのは、加害者に共通する特有の"認知の歪み"についてです。

行動前:自分は大人の女性に相手されないから、子どもに手を出すしかない

行動中:この子は、こういう性的なことが好きみたいだ。

行動後:何をしても騒がなかったってことは、この子は自分のことが好きに違いない。2人は純愛で結ばれている!

このような例をとって、段階を追って自分の行動を正当化して加害を進めていく心情の動きを説明しています。

ただ同時にこのような心の動きは、犯罪者に特有のものではなく人間誰もに当てはまるとも指摘されていました。(ex.ダイエット中にラーメンを食べてしまう時

 

次に語られるのは、加害者らのバックグラウンドや再犯率の高さです。

バックグラウンドとして何らかの被害体験を持つ人は多いもののその内実は様々です。一方で共通しているのは加害行為への依存でした。

著者は小児性愛を病気とみなし治療する必要があると考え 、そのためのクリニックを開いています。

ただ自身の癖を引目に感じていてクリニックに足を運ばないことも多いそうです。

また子どもに手を出して捕まると同じ犯罪者からも卑下されたり、親族からも見放されたりと社会的に孤立してしまい、結果としてクリニックに訪れることなく再犯に及んでしまうことも多くあるそうです。

刑罰を厳罰にした方がいいとの意見も多いですが、筆者はあくまで精神的な疾患として治療する必要性を訴えます。

 

児童ポルノについてや社会構造的に見た小児性愛についても触れられていました。

実在する人物を被写体としたものを規制することはもちろんのこと、非実在の子どもを描いたものにも規制が必要であると筆者は訴えます。

加害経験のある人物がほぼ100%触れていることを指摘し、児童ポルノがトリガーになっていると主張します。

また、筆者は男尊女卑の社会が小児性愛というものを助長していると述べています。

日本には「未熟=かわいい」の価値観があります。

ここには、男性による自身の立場を脅かす可能性のない女性を評価すると言う構造があり、これは性愛障害者らが自分を脅かさない子供という存在に自分を「受け入れる」よう押し付けていることに通じると言うのです。

これに加え、日本社会には「女性が男性の性欲を受け止めるべき、社会によってケアされるべき」という通念があるともいいます。

日常生活の中で男性の性欲を喚起するものを目にする機会があまりにも多いことや、コンビニから成人向け雑誌の販売中止に対する「それでは性犯罪が増加する」という反論をその根拠に上げていました。

 

 

読んでいてしんどい部分が多い本ではありましたが、いろいろ考えさせられる部分がありました。

被害者を思うといたたまれない気持ちになりますが、加害者も気づかぬうちに男尊女卑の思考を内面化しふとしたきっかけで加害に及んでしまうことを恐ろしく感じました。

ただこの本を読んで見て小児性愛や後天的な性的嗜好に関しては、LGBTと同列に語られるべきでないと感じました。

加害者を擁護するつもりは全くありませんが、人間何かに依存しまうことはよくあります。

依存先がこのような加害行為になる恐れがこの日本社会で生きる男性には誰でも可能性としてあることは怖いことだと思いました。

これまで二次元における児童ポルノは許されてもいいのではないかと思っていました。

しかし、それらが確実に犯罪のトリガーであること。

そして「それらがなくなると犯罪が増える」という主張の裏に「女性が男性の性欲を受け止めるべき、社会によってケアされるべき」という通念があると気づきました。

本屋でそのようなイラストが表紙となっていることに不快感を感じる多くの人に我慢をしいている現状も、この通念の二次的影響だと思います。

男として生きる者は、日本社会と小児性愛が地続きであること、そして男尊女卑的価値観に自覚的にならなけらばならないと思いました。

 

 

 

今回はこんな感じで終わりたいと思います。

センシティブな話題を扱いましたが、どこか不快にさせる表現があったとしたら謝罪いたします。

ただ一度、このような話題に触れられたのはいい経験になったと思います。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます😊

次回も楽しみにしていただけたら幸いです。